全脳自由帳

より考えるために書く

クライム・マシン(ジャック・リッチー)

クライム・マシン (河出文庫)

クライム・マシン (河出文庫)

短編集でありながら2006年の「このミステリーがすごい!」海外編第1位に選ばれたというだけあって、あちこちで評価が高い。その短編集が文庫になっている。

殺し屋の前に自称発明家が現れた。自分の発明したタイム・マシンで、殺害現場を目撃したという―表題作「クライム・マシン」、妻の消失に秘められた巧妙な犯罪計画を描くMWA賞受賞作「エミリーがいない」ほか、全14篇。軽妙な語り口に奇抜な発想、短篇ミステリの名手ジャック・リッチー名作選。

確かに切れ味は鋭い。どの話も描写がムダなくシンプル。かつ、最短距離で意外な結末にたどり着く感じが味わえる。訳文も自然で読みやすい。うまく翻訳しているのだと思う。

もうちょっと「濃い」話に仕立てた方がいいのではないかと思うものもあったが、そうするとこのシンプルさが損なわれるのだと思う。淡白な分だけササッと読める。

マイベストは表題作の「クライム・マシン」だが、これは切れ味の鋭さより巧妙な構成が光る、比較的濃い作品。「エミリーがいない」は今ひとつピンとこなかった。深読みが足りないのかと思って何度も読み直したのだが。