- 作者: 倉知淳
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1998/01/30
- メディア: 文庫
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今日も今日とて披露宴帰りに謎解きを始めた猫丸先輩。新聞記事につられて現地へ赴くこともあれば、あちらの海では船頭修業。絶妙のアドリブで舞台の急場を凌ぎ、こちらでは在野の研究家然とする。飲み屋で探偵指南をするやら、悩み相談に半畳を打つやら…天馬空を行く不羈なるおかたである。事ある所ないところ黒い上着を翻し、迷える仔羊の愁眉を開く、猫丸先輩ここにあり。
なんか淡白な話の多い短編集だった。猫丸先輩のキャラクターゆえか。
- 空中散歩者の最期
いくらなんでも無理がある。いきなり出鼻をくじかれた。 - 約束
シンプルなロジックでよし。この温かさにはちょっと居心地の悪いものを感じたが、まあ好みの問題。 - 海に棲む河童
冒頭の語り(方言)の標準語訳が最後についている。原文で十分理解できたから訳の方は読まなくていいのかと思っていたら、そうではない。訳の方に作者のこだわりが詰まっているのだった。 - 一六三人の目撃者
解明のロジックはよかったのだが、被害者(犯人ではない)のやろうとしていたことの意味がよくわからなかった。 - 寄生虫館の殺人
行ったことがあるので興味深く読んだ。確かに、展示している内容の特異さと、あまりにも普通な建物の雰囲気にギャップのある施設である。 - 生首幽霊
手の込んだトリックでよし。マイベストを選ぶとするならこれか。 - 日曜の夜は出たくない
安楽椅子探偵。この推理、そうだと考えられるというのはわかったが、そうでなければならない理由はわからない。わざとそういう状態にしているのかもしれないが。
最後に「誰にも解析できないであろうメッセージ」と「蛇足―あるいは真夜中の電話」。トータル性を持たせようとしているのはわかるが、かえって落ち着かなかった。
次は猫丸先輩ものの長編を読んでみたい。「過ぎ行く風はみどり色」か。