- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/09/12
- メディア: 文庫
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「知りたいですか」。郷土史家を名乗る男は囁く。「知り―たいです」。答えた男女は己を失い、昏き界へと連れ去られた。非常時下、大量殺戮の果てに伊豆山中の集落が消えたとの奇怪な噂。敗戦後、簇出した東洋風の胡乱な集団六つ。十五年を経て宴の支度は整い、京極堂を誘い出す計は成る。シリーズ第六弾。
鳥山石燕「画圖百鬼夜行」に載っている妖怪の名が冠された6つの話が収録されている(ただし「塗仏」はまだ登場しない)。これでいったん完結していることにはなっているらしいが、話は「塗仏の宴―宴の始末」へと続く(はず)。多分6編全部が「始末」への伏線になっているのだろう。
6編のうち最初と最後を除く4編には一応結末がある。いずれにも怪しげな団体が登場し、謎の真相には共通する特徴がある。マイベストを挙げるとするなら「ひょうすべ」か。これは鮮やかな話だった。
複数の話に分かれているせいもあり、京極堂のウンチクはちょっと少なめ。というか、妖怪に関するウンチクばかりだったような気がする。京極堂と同じくらい多弁に妖怪についてのウンチクを語る多々良勝五郎も登場。
やはり、「支度」だけで内容を云々するのは難しい。まだ風呂敷は広げられたまま。もしかしたらこれまでのどの作品よりも大きな風呂敷が広げられているのかも。関口巽の運命やいかに? 「支度」「始末」の2冊を合わせると約2000ページの長い話になる。「塗仏の宴」全体での二重構造に期待するとしよう。あまり間をおかずに「始末」の方を読みたい。