
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1991/06/04
- メディア: 文庫
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九回裏二死満塁、春の選抜高校野球大会、開陽高校のエース須田武志は、最後に揺れて落ちる“魔球”を投げた! すべてはこの一球に込められていた…捕手北岡明は大会後まもなく、愛犬と共に刺殺体で発見された。野球部の部員たちは疑心暗鬼に駆られた。高校生活最後の暗転と永遠の純情を描いた青春推理。
舞台は昭和39年。私が生まれた年である。この作品には、そのあたりの時代に設定しなければならない理由がある。調べてみると、どうやら昭和40年ではダメだったようである。タイトルや時代背景からちばてつやの「ちかいの魔球」のことをちょっと思い出した。
主人公である須田武志の気持ちが直接描かれるのは「序章」だけで、あとは一貫して外からの描写のみがなされる。途中までは五里霧中の殺人事件。その真相が明らかになるに従い、「魔球」というタイトルとは対照的な、彼のまっすぐな生き方が浮かび上がってくる。
読み進むうちに主人公に入れ込まされ、最後にはせつなさが残る。今につながる東野流が「放課後」よりもよく出た佳作だと思う。