全脳自由帳

より考えるために書く

暗色コメディ(連城三紀彦)

暗色コメディ (文春文庫)

暗色コメディ (文春文庫)

白光」に衝撃を受けたので、連城三紀彦のミステリーをもっと読んでみたくなった。まずは処女長編から。

もう一人の自分を目撃してしまった主婦。自分を轢き殺したはずのトラックが消滅した画家。妻に、あんたは一週間前に死んだと告げられた葬儀屋。知らぬ間に妻が別人にすり替わっていた外科医。四つの狂気が織りなす幻想のタペストリーから、やがて浮かび上がる真犯人の狡知。本格ミステリの最高傑作!

上記の通り、前半の「第一部」で4つの大きな謎が提示される。「もう一人の自分を目撃してしまった」というのはちょっと大げさだが、他は正しい。これらの謎が「第二部」でどんどん収束していき、意外な真相が待っている。

構成力には感嘆したが、4つの謎がいささか散漫で、何と何がどこで起こっているのか、全体をちゃんと把握しながら読むのが難しかった。後半の謎解きにも若干無理があると思うところがあったし。

最後に明らかになる真相は、天地がひっくり返るようなものではないがゆえに逆にすごい。読んだ人にしかわからない表現だが。