奪取(真保裕一)

奪取(上) (講談社文庫)

奪取(下) (講談社文庫)

いろんなところで「おもしろい」という評判を耳(目)にしていた通り、とてもおもしろかった。入魂の力作である。上下巻にわたる分量も気にならず、一気に読めた。

1260万円。友人の雅人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、大胆な偽札作りを2人で実行しようとする道郎・22歳。パソコンや機械に詳しい彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をＷ受賞した、涙と笑いの傑作長編サスペンス！

コストの点でも労力の点でも割が合わない上に妥協の許されない偽札づくりに命をかける主人公たち。実際の紙幣づくり(今の樋口一葉・野口英世ではなく新渡戸稲造・夏目漱石の時の福沢諭吉)を徹底的に調査した上で書かれたのだろう。読んでいて感じるリアリティがタダモノではない。

ルパン三世(のよくできた話)を観る時のように、犯罪を企む側を応援し、失敗に歯噛みし、成功に快哉を叫ぶ。ハードボイルド的カッコよさはたっぷり入っている。ラストでちょっとコケさせられたが、誰にでも薦められる作品である。