全脳自由帳

より考えるために書く

飛・角・歩の不成

飛車・角・歩は成ると利きが単純に増すので、普通は成れるときは成った方がよいが、わざと不成(ならず)にした方がよい場合がある。メモ。

  1. 打歩詰回避
    成るとのちに打歩詰(反則)で詰まなくなるところを不成にして利きを弱くすることによって詰ませる。詰将棋ではよくある。
  2. 打歩詰誘致
    不成にすることによって自玉の守備を弱め、相手が自玉頭に歩を打つ手を打歩詰で打てなくすることによって逃れる。詰将棋では玉方の手数延ばしの手として時々出現。
  3. 千日手誘致
    成ると不利になる局面を不成にすることによって千日手に持ち込める局面(相手にとっては千日手にしないと不利になる局面)があるらしい。
  4. 駒を裏返す時間の節約
    これは手として最善というわけではないが、秒読みで時間ギリギリのときに。

これら以外に「千日手回避」というのももしかしたらあるかもしれない。

図は1.がプロ棋士の公式戦で実際に起こった有名な一局(1981.7.19 第24期王位戦リーグ ▲谷川名人×大山十五世名人)。

ここから▲4三角引不成△5四歩▲6六銀打△同と▲同歩△5五玉▲5六歩で投了。4三の角が馬になっていると最後の▲5六歩が打歩詰で打てない。角不成の前の王手をし始めたところから詰むまで数えると35手詰。鮮やか。こういうドラマチックなことが起こるのが谷川浩司という人である。

谷川といえば、3/16のA級プレーオフは大熱戦の末、羽生三冠を下して谷川九段が森内名人への挑戦権を得た。昔羽生名人に挑戦して奪取した時の揮毫の言葉「危所遊」のように楽しんで臨み、ぜひまた名人になってほしい。