全脳自由帳

より考えるために書く

ホテルのカードキー

先日、ホテル宿泊でとんでもないことに遭遇した。

台風11号が関東地方を直撃しそうな夜のことであった。私は関東への出張からその晩に大阪へ帰る予定にしていたが、新幹線でモロに台風に向かって行くことになり、途中で車内に缶ヅメになる危険性があったため、無理せずもう1泊することにした。同じことを考える人が多かったのか、定宿にしているホテルを含め安いところは全て満室。しかたなくちょっとお高い大手ホテルに予約を入れた。

雨が強くなる中、同僚と飲みに行ったあとホテルにチェックインしたのは夜中の0時を過ぎていた。ここの部屋の鍵はカード式で、滞在中だけ有効な紙のカードキーを渡される。それをドアの溝に差し込んで抜くとドアが開くという、よくあるシステムである。

部屋のドアにカードを差し込んで開けたが、なぜか少ししか開かない。よく見ると中からチェーンがかかっているではないか。おかしいなと思いながらガチャガチャやっていると、部屋の中から「んー?」という声がしてドキッとした。中に人がいたのである。

下着のシャツにトランクスという格好のおじさんが出てきた。電気は消えていたから、寝ていたらしい。事情を話すとフロントに電話してくれた。カードキーのダブルブッキングだという。そんなことあるのか。

フロントへ戻ってみると、いかにも「その時勤務していた中で一番えらい人」という感じの人が待っていた。平謝りである。「当方のミスです。誠に申し訳ございません」。どんなミスなのであろうか。「代わりのお部屋に御案内いたします」と言って、私が「一人で行きますから」というのもかまわず、エレベーターで部屋まで案内された。

こういうトラブルがあると、現金にも「もしかしていい部屋かも」と期待してしまう。果たして「代わりの部屋」は最上階に近いスイートルームであった(他に空室がなかったのかもしれないが)。部屋2つ、ベッド2つ、トイレ2つ、テレビ2つにDVDレコーダーもある(こんな描写しかできない自分がちょっとなさけない)。2つずつあっても1人で同時に使えるわけではないし、DVDのディスクを持っていなかったのでDVDレコーダーも役に立たなかったが、広い部屋で束の間のんびりして帰ってきた。あとでこの部屋の宿泊料を調べてみたら、私が払ったシングル価格の4倍だった。

さて、私は結果的に得したわけだが、一番迷惑したのは最初の部屋に泊まっていたおじさんである。ホテルにはよく謝っておいてくださいと言っておいたが。それにしても、もしドアにチェーンがかかっていなかったら、当然私は部屋の中に入って行ったはず。そして電気をつけていただろう。そこにいたのが若い女性だったりしたら...。まあ身の潔白は証明できると思うが、こわい目にあわせることになっていたはず。温和なおじさんでまだよかった。

振り返ると、ドアにチェーンがかかっていて開かなかった時「すでに泊まっている人がいるのではないか」とは少しも考えなかった。「昼間掃除した人が外からチェーンをかけておいたのかな? そんなこと可能なのか?」とか思っていたのである。カードキーでダブルブッキングが起こる可能性などハナから頭になかった。

今回の教訓は、カードキーのシステムは必ずしも信用できないということ。システムとしてどういうガードをかけているのかわからないが、人間の手が介在するとミスも起こる。それと、ホテルの部屋では必ずチェーンをかけましょう。