全脳自由帳

より考えるために書く

イナイ×イナイ(森博嗣)

イナイ×イナイ PEEKABOO (講談社文庫)

イナイ×イナイ PEEKABOO (講談社文庫)

 

Gシリーズの文庫化された作品はすべて読んだので、Xシリーズを読み始めた。これが第1作。2007年の作品。英題の”Peekaboo”は「いないいないばあ」のこと。

黒髪の佳人、佐竹千鶴は椙田探偵事務所を訪れて、こう切り出した。「私の兄を捜していただきたいのです」。双子の妹、千春とともに都心の広大な旧家に暮らすが、兄の鎮夫は母屋の地下牢に幽閉されているのだという。椙田の助手、小川と真鍋が調査に向かうが、謎は深まるばかり――。Xシリーズ、文庫化始動!

Xシリーズについて作者は以下のように書いている。

これまでのシリーズとはまた少し違って、少々レトロなものを書きたいと思います。ノスタルジィでしょうか。もちろん、新しさあってのレトロですが。Gシリーズの途中に、このシリーズをスタートさせるのも、当初から計画していたことです。

Xシリーズ - 浮遊工作室 (ミステリィ制作部)

旧家が舞台なので、レトロといえばレトロだった。しかし多分、レトロという言葉にはそれ以上の意味が込められているのだろう。なんとなく話の展開がゆっくりだということは言える。

謎の解決はされるのだが、スパッとはいかない。謎解きありのミステリーを読んでいるというより、普通の小説を読んでいる感じに近い。そういうシリーズになるような予感がする。Gシリーズ(まだ全巻読んでいないが)のように、シリーズを通してのしかけが用意してありそう。そこにも注目しながら読むことにしよう。

「へえ……」鷹知は笑った。「案外、古風なんですね、小川さん」
「見た感じよりも、年上なんですよ」真鍋が言った。
「何ですって?」小川は振り返って、彼を睨んだ。「何て言った? よく聞こえなかったけど」
「いえ……、あれ、おかしいな、褒めたつもりだったんですけど」真鍋は目を丸くする。
「褒めてない。全然褒めてない」

わかるわかる。同じことを言うにも、言い方によって受け取られ方は全く違う。この小川令子と真鍋瞬市のコンビにも期待。二人がくっつくことはないと思うが。真鍋はどうということのない奴かと思っていたらそうではなかった。