米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語(梅田望夫)

iPadがやってきたから、もう一度ウェブの話をしよう」以来、梅田本はもういいかと思っていたのだが、この本はおもしろそうだと思った。氏の将棋の本は読んだことがなかったことに気づく。

「はじめに」にも書かれているが、どうして羽生名人(現在三冠)だけが強いのか、という(非将棋ファンからの)問いには、「いや、そんなことはなくて...」と言いたくなる。しかしそのあとの説明が出てこない。少なくとも羽生のこれまでの圧倒的な実績は、単なる将棋の実力ということだけでは説明できないと感じている人は多いと思う。

この本では、羽生本人と木村・山崎・三浦・深浦といったライバルたち(いわゆる羽生世代ではなくてちょっと下の世代)へのインタビューや観戦記を通じて上の「どうして...」という問いの答を考える...ということを通じて、現代将棋のプロ棋士のありようをリアルに描いている。どの棋士も真摯に語り、それに対して梅田氏が鋭い分析のメスを入れる。一気に読んでしまった。

最後にたどり着く「あとがき」が圧巻。これは実際にはあとがきではなく、「結論」に相当するものである。ここには「どうして...」に対する一応の解答が書いてある。なるほどと思った上で、そこまでの本編の印象として私は「それだけじゃないところで、羽生名人はやっぱり他の棋士とは違う」と思った。将棋に対する姿勢が違う。他の棋士より真剣だとかいうような単純なことではなく、質の違うものを感じる。この「違い」があとがきにある「結論」と異なるのかどうかもわからないが。

かつての「ウェブ進化論」のように、見えていなかった世界を解き明かし、垣間見させてくれる本だった。