米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

どこまでも殺されて(連城三紀彦)

どこまでも殺されて (新潮文庫)

どこまでも殺されて (新潮文庫)

1990年の作品。

「どこまでも殺されていく僕がいる。いつまでも殺されていく僕がいる」七度も殺され、今まさに八度めに殺されようとしているという謎の手記。そして高校教師・横田勝彦のもとには、ある男子生徒から「僕は殺されようとしています。助けて下さい」という必死のメッセージが届く。生徒たちの協力を得て、殺人の阻止と謎の解明に挑む横田。周致な伏線と驚愕の展開に彩られた本格推理長編。

7回殺されるというところから連想されるのは、同じ連城作品である「私という名の変奏曲」(1984年)。もちろん話の構造は違うのだが、意識して書かれたに違いない。

この「どこまでも殺されて」の方もアクロバット的なしかけを楽しむことはできるし、終盤ではいつものように感心させられたのだが、ちょっと小技気味。最初に提示される「謎」がそれほど底が深そうに見えなかったのが一因だと思う。それに、もっと全体のしかけが有機的に結びついていてほしかった。贅沢な要求になってしまうが。

主要登場人物の関係がじっくり描かれていないのも残念なところ。教師・横田と生徒たちの間でいつの間にか探偵団ができていたり、探偵頭・直美と横田の心理的な関係がよくわからなかったり。掘り下げてくれると迫力が増したのに、と思う。

とは言うものの、そこはやはり連城作品。独特の美しく冷ややかな文体が味わえる作品ではある。