米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

崩れる―結婚にまつわる八つの風景(貫井徳郎)

崩れる―結婚にまつわる八つの風景 (集英社文庫)

崩れる―結婚にまつわる八つの風景 (集英社文庫)

1994〜6年に発表された短編を集めて1997年に刊行された、初の短編集。

こんな生活、もう我慢できない…。自堕落な夫と身勝手な息子に翻弄される主婦の救いのない日々。昔、捨てた女が新婚家庭にかけてきた電話。突然、高校時代の友人から招待された披露宴。公園デビューした若い母親を苦しめる得体の知れない知人。マンションの隣室から臭う腐臭…。平穏な日常にひそむ狂気と恐怖を描きだす八編。平凡で幸せな結婚や家庭に退屈しているあなたへ贈る傑作短編集。

作者の「自註解説」によると、短編に慣れていなかったころに書かれたものらしい。確かに最初の「崩れる」などは短編なのにえらく展開が遅くて、これをどうまとめるのだろうと思いながら読んでいた。「長編の書き方で書いている」と言われるとそんな気もする。

「結婚にまつわる...」というサブタイトルがついているが、全ての話が結婚を中心に描かれているわけではなく、特に中盤はあまり前面に出てきていないものが多い。何らかの形で結婚に関係してはいるが。

いずれの短編も、意外な結末が待っているか、独特の重い感じの展開になる。そういう点でこれまで読んだ貫井作品とつながるものはかなりある。ミステリー作家だけあって、どの話にも「謎の解明」という側面があるので、安心して読める。

そんなこんなを含めて、長編とはまた違った貫井作品の雰囲気を味わえる短編集。マイベストを選ぶとするなら最後の「見られる」。展開がスッキリしているし、情景が浮かびやすい話だった。読み終えたあとに感じる余韻も悪くない。