米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

百舌の叫ぶ夜(逢坂剛)

百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

百舌の叫ぶ夜 (百舌シリーズ) (集英社文庫)

これも「未読の作者を読もう」の一環。1986年の作品。公安警察シリーズ第2作、もしくは百舌シリーズ第1作。

能登半島の突端にある孤狼畔で発見された記憶喪失の男は、妹と名乗る女によって兄の新谷和彦であると確認された。東京新宿では過激派集団による爆弾事件が発生、倉木尚武警部の妻が巻きぞえとなり死亡。そして豊明興業のテロリストと思われる新谷を尾行していた明星美希部長刑事。錯綜した人間関係の中で巻き起こる男たちの宿命の対決。その背後に隠された恐るべき陰謀。迫真のサスペンス長編。

なんとなく、ハードボイルド色の強い作品なのかなとおそれていたのだが、そんなことはなくて、私にはとても話に入り込みやすかった。「気の利いたことを言おう言おうとするセリフまわし」に悩まされることもなし。

こういうしかけ(どんなものかは秘す)の作品だとは思っていなかった。予備知識なしで臨んだのがよかったようである。記憶喪失という設定は安易に感じられがちだと思うのだが、この作品での使い方はうまい。また、主要な登場人物の性格がいずれもはっきりとは描かれていないのも、話を追っていく上では効果的に働いている。露骨に「警察もの」の雰囲気を醸し出していないのもよかった。

百舌シリーズはまだ「幻の翼」「砕かれた鍵」「よみがえる百舌」「鵟(のすり)の巣」と4作続くようだし、この作品の前に「裏切りの日々」というのもあるので、そのうち他の作品も読んでみたい。