米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

夏と花火と私の死体(乙一)

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

「未読の作者を読もう」シリーズの一環として、前から何か読もうと思っていた乙一の作品を読む。「夏と花火と私の死体」「優子」を収録。

九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか? 死体をどこへ隠せばいいのか? 恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。

表題作は140ページ足らずの短い作品で、1996年のデビュー作。「松岡正剛の千夜千冊」でも取り上げられている(第321夜)。「芥川や太宰の才能をもっているのではないかとおもわせる」「三島由紀夫のような作品も作れてしまうにちがいない」などと、すごいことが書いてある。

途中まではサスペンス。殺された「わたし」がその後の状況を記述していくという設定。そういう異常な設定にさらりと入っていき、兄妹による自分の死体隠しを冷ややかに描写する。あくまで淡々とした語りがこわい。さらにトリックがしかけてある。真相はオーソドックスだとも思えるのだが、そこに至るまでの演出効果は満点。

「優子」の方も、共通したこわさを持つ作品。しかけもちゃんと隠されていた。