米中毒別館

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チャイナ・オレンジの秘密(エラリー・クイーン)

チャイナ・オレンジの秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-31)

チャイナ・オレンジの秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-31)

1934年、国名シリーズ第8作。

何もかもあべこべだ! 死体の着衣や絨緞は裏返し、本棚は壁を向いている…男が殺されていたホテルの密室状態となった一室では動かせるものがすべてあべこべになっていた。部屋の主である友人の依頼でエラリイは調査を始めるが、被害者の身元を示すものはまったくない。わざわざ面倒な細工をした犯人の意図とは? また捜査線上に浮かぶ“あべこべの国”との関係は? 卓抜な着想と奇抜なトリックで激賞を浴びた傑作!

「あべこべ」がテーマなのだが、話の運び方が不自然で、ちょっとついて行けなかった。

たとえば途中、「中国はあべこべの国」という話が出てくる。ミス・テンプルがエラリイに、中国がアメリカと逆になっている習慣(涼をとるのに熱いタオルを使うとか)を挙げていく。しかし「逆」ではなくて単に大きく違っているだけのものも結構あるので、かなりこじつけの雰囲気が漂う。

中国語は「あべこべに印刷され横に書くのではなく上から下へ書かれる」というのだが、縦書きは横書きの「逆」というわけではない。アラビア語のように右から左へ書くというのならわかる。この時代の中国語は横書きの時に右から左へ書かれていた、という話なら納得できたのに。

謎解きはこのシリーズにしてはかなり大ざっぱな印象。それに、事前になんとなく聞いてはいたが、トリックのかなり重要な部分が、日本人ならまず知らないことを背景知識として要求している。しかたがないこととはいえ、読後感にはかなり大きく影響する。今のアメリカの人たちにとってもこれは常識なのだろうか。

密室の謎解きはこの時代にしてはしっかりしたものだと思うのだが、図抜きの文章だけではよく理解できない。真犯人を特定するロジックもそう複雑なものではなく、クイーンらしい感じがしなかった。

訳文はかなり不自然で読みにくい。次作のハヤカワ版「スペイン岬の秘密」は2002年の新訳らしい。その点にはちょっと期待。