全脳自由帳

より考えるために書く

人喰い(笹沢左保)

人喰い (徳間文庫)

人喰い (徳間文庫)

1960年の作品。

花城佐紀子の姉・由記子が、遺言を残し恋人の本多昭一と失踪した。昭一は由記子の勤める会社の社長の息子で、折しも経営側と組合側の激烈な労働争議が続いていたため、二人の恋は許されぬものだった。二日後、山梨の昇仙峡で昭一の死体が発見された。警察の調べでは単独自殺か他殺ということだった。姉はどこへ消えたのか? 佐紀子は、姉の同僚でもある恋人の豊島と真相を追う。日本推理作家協会賞受賞作。

最初の姉の手紙から始まる物語には、独特の暗いムードが漂う。笹沢作品の場合、こういうムードが漂うとかえって安心できる。

トリックはオーソドックスだと思う。正統派の推理小説を読んだなという読後感。会社と組合との関係や、DNA鑑定のないところには時代を感じさせられる。