米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

喜劇悲奇劇(泡坂妻夫)

喜劇悲奇劇 (ハルキ文庫)

喜劇悲奇劇 (ハルキ文庫)

1972年の作品。

落ちぶれた奇術師・楓七郎は、かつての仲間から仕事の依頼を受けた。ショウボート・ウコン号でのバラエティショウ出演―早速、船へと赴いた彼を待っていたのは、何とも奇妙な連続殺人だった。被害者たちはみな、上から読んでも下から読んでも同じに読める“回文名”を持つ者ばかりのこの事件に隠された真相とは? 構成から展開まで、凝りに凝った趣向で彩られた、異色のミステリー長篇。

これは楽しい。泡坂妻夫の「奇智」が炸裂。この人にしか書けない作品。

回文と奇術が随所に活かされている。特に回文が謎解きの一部をなすのは圧巻。回文名ではないと思っていた人からも回文が飛び出してくる。細かいツッコミは入れずに、バカバカしさと緻密さを同時に楽しむべきである。

回文は「亜愛一郎の転倒」収録の「意外な遺骸」でもモチーフになっていた。こちらは少し後の1979年らしい。