米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

地獄の奇術師(二階堂黎人)

地獄の奇術師 (講談社文庫)

地獄の奇術師 (講談社文庫)

前々から読みたいと思っていた二階堂黎人。これは1992年のデビュー作。

十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、ミイラのような男が出没した。顔中に包帯を巻いた、異様な恰好である。自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告をしたのだ。「地獄の奇術師」の目的は何なのか? 女子高生で名探偵、二階堂蘭子の推理が冴え渡る、本格探偵小説!

本格推理小説の古典を強烈に意識して書かれた作品。舞台は昭和42年だが、その設定以上に古き時代の雰囲気が濃く漂う。血筋のややこしい一族に古屋敷にミイラ男である(表紙の人物は一体誰?)。文体もどことなく古典風。事件の謎も正統派推理小説の趣で、「不可能犯罪」という言葉が浮かぶ

私は大いに楽しめたが、古典の名作を読み込んだ人からすると新味に欠けるということになるのかもしれない。真相がミエミエじゃないかと言う人もいそうである。

古典の作品名が会話の中にたくさん出てくる。そのために注釈(巻末)の参照がやたら多いのは歓迎できない。わざとこういう構成にしているのだと思うし、注釈だけでもプチ古典解説になっていて興味深いのだが、いちいち後ろをめくるのは面倒。脚注として本文と同じページに載せてくれたらいいのに。

最後の章「死亡の座」での「解釈」はあまり必要なものとは思えなかった。それにしても、キリスト教というのは推理小説ではろくな扱いをされないことが多いな。

レギュラー陣(と思われる人たち)のキャラが立っているようには感じられないので、二階堂蘭子という女の子を探偵役にしたことで何か大きな効果が出ているとは今のところ思えないが、以降の作品を楽しみにすることにする。世界最長の本格推理小説人狼城の恐怖」もそのうち読んでみたい。