米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

BG、あるいは死せるカイニス(石持浅海)

BG、あるいは死せるカイニス (創元推理文庫)

BG、あるいは死せるカイニス (創元推理文庫)

2004年の作品。文庫になるのをずっと待っていた。

星降る夜、天文部の観測会に参加したはずの姉が何者かに殺害された。男性化候補の筆頭で、誰からも慕われていた姉が、何故? さらに期末試験が終わった日、姉の後継者と目されていた小百合までもが被害に。姉が遺した謎の言葉“BG”とは果たして何を意味するのか―。全人類は生まれた時はすべて女性、のちに一部が男性に転換するという世界を舞台にした学園ミステリの意欲作。

これまで読んだ石持作品とはかなり毛色が異なる。特殊な設定を使っていることには違いないが、この作品でははっきりとSFの設定。

「全人類は生まれた時はすべて女性、のちに一部が男性に転換する」という点以外は我々の住んでいる世界と同じという世界。この1点による違いだけが自然に強調されてくる運び方はうまい。「男が女をレイプするってのはなかなか想像しづらいが」などというセリフがサラッと出てくる。SFミステリーとして中に入り込んでいくことができる。

これまでに読んだ石持作品に比べるとロジックは弱い。推理の端緒になったという「引っかかること」からしてまず納得できなかった。他にもいくつか納得できないことはあったし、伏線の張り方にもあからさまなところあり。解決に至る展開もかなり唐突。

しかし全体としてはよくまとまった話だと思う。いつも石持作品には「終章はいらないのではないか?」という感想を持つのだが、今回はそれに当てはまらなかった。ピシッと物語を締める納得の終章である。

タイトルの由来は「あとがき」にあったが、もっとすっきりしたのをつけられなかったものか。英題(創元推理文庫では邦題に続いて必ず書かれる)は単に「BG」。「カイニス」というのはギリシャ神話に登場する人の名前らしい。最初は女性だったが、性転換してカイネウスという男になる。