米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

刺青殺人事件(高木彬光)

1948年、デビュー作。いろんな出版社から出ているが、古本屋で見つけた角川文庫版を読んだ。字が小さい。素直に新装版(光文社)で読んだ方がよかったかもしれない。これらのどちらも、発表時から大幅に加筆して約2倍の分量になったあとのものらしい。発表時の原稿を収めた「初稿・刺青殺人事件」も出ている。

<刺青>には、阿片のような怪奇な魅力がある。何万本という針を肌身に刺しこみ、命をきざむ激痛のあとには、いい知れぬ陶酔が待っている。
―T大医学部の標本室に横たわる、首もなく、手足もなく、ただ刺青をした胴体だけのトルソ(塑像)。ぶきみな形で、あざやかな色彩を浮かべているこの一枚の人皮の裏には、醜くく、恐ろしい秘密が隠されていた…。
密室の中でくりひろげられた惨劇、本格推理小説の最高傑作!

全てが明かされると、いろんな要素のトリックが組み合わさっていることがわかる。なんとなく想像できるところもあるが、全体像がわかってしまうほど簡単にはできていない。特に刺青というものをうまく使っているのは見事。密室トリックの解明はあっけなかったが。

探偵役の神津恭介は「人形はなぜ殺される」の時のようなヘタレではなかった。しかし本作のように途中で突然登場してきてやおら推理を始めるパターンは、探偵役に感情移入できないのでどうも苦手である(他の例: 「りら荘事件」(鮎川哲也)の星影龍三)。しかも推理の手法にちょっと荒唐無稽なものあり。全体のロジックに関わるものではないので、ご愛嬌というところか。