米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

亜愛一郎の狼狽(泡坂妻夫)

亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)

亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)

泡坂妻夫のデビュー作「DL2号機事件」をはじめ8編を収めた短編集。亜愛一郎シリーズ三部作の第1弾。

『11枚のとらんぷ』を筆頭に、『乱れからくり』等数々の名作でわが国推理文壇に不動の地位を築いた泡坂妻夫が、この一作をもってデビューを飾った記念すべき作品―それが本書冒頭に収めた「DL2号機事件」である。ユニークなキャラクターの探偵、亜愛一郎とともにその飄々とした姿を現わした著者の、会心の笑みが聞こえてきそうな、秀作揃いの作品集。亜愛一郎三部作の開幕!

「端正な」という形容がふさわしい、いずれも直球勝負の本格推理作品。亜愛一郎のキャラクターとあいまってさわやかな気持ちで読める。短編なのでどれもしかけは比較的シンプルではあるが、人間心理もの、仮想密室もの、館もの、暗号もの、文化考証もの...と工夫がこらされていて楽しい。

マイベストを選ぶのは難しい。よくできた話なのを評価して「G線上の鼬」か、創作上の苦労に敬意を表して「掘出された童話」(ただし、出版元の東京創元社の方で一工夫してほしかった)か、特殊な環境を巧みに利用したという点で「ホロボの神」かな。