米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

斜光(泡坂妻夫)

斜光―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)

斜光―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)

「斜光」「黒き舞楽」「かげろう飛車」の3編を収録。「昭和ミステリ秘宝」というのは扶桑社文庫のシリーズ。ユニークな名前である。

果たして「処女懐胎」は有り得るのか? ある女性の過去に秘められた謎がスリリングに解明されていく傑作―『斜光』
ある人形師の家に嫁いだ女性が、次々と不審な死を遂げる。人形に取り憑かれた人々をめぐる禁断の世界―『黒き舞楽
泡坂妻夫が第三長篇『湖底のまつり』以来、一貫して描きつづける「愛(エロス)」をテーマにしたミステリの中から、絶品ともいうべき二作を収め、ボーナストラックとして単行本未収録の暗号ミステリ「かげろう飛車」を加えたファン待望の愛蔵版!

泡坂作品の独特さは、「奇智」と「妖しさ」に満ちているところだと思う。「湖底のまつり」の流れを汲むというだけあって、「斜光」「黒き舞楽」は「妖しさ」の方に重きを置いた作品だった。「秘宝」の名にふさわしい。

  • 斜光
    全く別に見える2つの話が並行して進行していく。時間軸を含めた構成の妙は「奇智」とも言える。相変わらず、気づかれないようにきちんと張られてあった伏線にあとで感心。そして、男女の交わりまで謎を構成する要素にしてしまうのは見事だった。
  • 黒き舞楽
    私はこちらの方が気に入った。抑えた書き方になっている分、かえって「妖しさ」が強調されている。人智で説明がつかないと思われる謎に踏み入っていくところは「妖女のねむり」を思い出させる。それに決着をつけてしまう技はすごい。
  • かげろう飛車
    作品集「秘文字」(1979年)に収録。「秘文字」には、他作家の2編と併せて3編が全て暗号化して収録されていたらしい。どういう暗号だったのだろう。この作品自体も暗号の話である。飛車の話だけに(?)ひねりが利いている。