米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

焦茶色のパステル(岡嶋二人)

焦茶色のパステル (講談社文庫)

焦茶色のパステル (講談社文庫)

岡嶋二人のデビュー作。

東北の牧場で、牧場長と競馬評論家・大友隆一が殺され、サラブレッドの母子、モンパレットとパステルも撃たれた。競馬の知識のない隆一の妻・香苗を怪事件が次々に襲う。一連の事件の裏には、競馬界を揺るがす恐るべき秘密が隠されていた。注目の共作作家の傑作競馬ミステリー。第28回江戸川乱歩賞受賞作品。

さすがは岡嶋二人、うまいなあと思わされた。描写がしっかりしているので安心して読めるし、意外性もサスペンス性も十分。犯行の裏に潜んでいた「競馬界を揺るがす恐るべき秘密」については、誰も気がつかなかったというところに若干不自然さを感じたが、それを差し引いてもよく練られている。

競馬や競走馬に関する知識の提示のしかたは極めて自然。私は全然詳しくないので勉強になった。「サラブレッドは血統を厳しく管理されており、全てのサラブレッドは父系の祖先をたどると特定の3頭のいずれかに必ずたどり着く」ということさえ知らなかった。漠然と馬の品種の1つだと思っていた。

ちなみにWikipediaによると、上記特定の3頭(三大始祖)というのは17・18世紀にいた牡馬ゴドルフィンアラビアンバイアリータークダーレーアラビアンで、たとえばナリタブライアンディープインパクトはどちらも25代さかのぼるとダーレーアラビアンにたどり着くらしい(3代前、父系の曾祖父から共通)。

この作品のように素人が探偵役になる場合、警察との関係をどう設定するかがいつも問題になる。警察そっちのけで素人が勝手に解決してしまう場合(吹雪の山荘もののように警察が介入できない状況を含む)もあれば、なんとなくうまく役割分担しながら推理していく場合もあるし、火村英生のように最初から警察と協力関係にある場合もある。この作品の大友香苗と綾部芙美子のコンビはいい味を出してはいるが、「もうちょっと警察に相談したらどうなのか?」と思ってしまった。かなり無鉄砲。