米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

鈍い球音(天藤真)

1971年、長編第3作。

団体客で賑わう東京タワーの展望台から、一人の男が忽然と姿を消した。マスコットの口髭とベレー帽だけを残して…。しかも、その男は日本シリーズを目前に控えたプロ野球チームの監督だった! やむなく代理監督を立てて戦いに臨んだ東京ヒーローズが善戦を続けるさなか、今度は代理監督が丹前だけを残して、宿舎から消失してしまう…?! 手に汗握る野球ミステリの傑作!

繰り返される誘拐と並行して開催される日本シリーズという構図には緊張感がある。「監督代行の代行」が率いる「東京」チームと、矢田貝記者を頭とする誘拐捜査団も生き生きと描かれている。

しかしあとで明かされる誘拐の動機の構造が、気が利いてはいるものの今ひとつピンとこなかった。背景にあった闇の思惑というのにどうも現実味を感じられないのである。「そのためにそこまでやるのか?」という印象。それと、桂監督の人物像をもっと語ってほしかったな。

試合の描写はまあまあか。リアルではあるのだが。こういう感想を持つのは、自分が昔野球マンガを読みすぎたせいかもしれない。