米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

どんでん返し(笹沢左保)

どんでん返し (徳間文庫)

どんでん返し (徳間文庫)

笹沢左保が多く残した実験的な小説の1つに挙げられる作品。

大学で心理学を講じる公次のマンションへ、深夜、思いもかけぬ訪問者があった。一年半前、彼を捨てて親友山根不二夫のもとへ走った悦子だった。外は雨だというのに、傘もささずに濡れそぼっている。そんな挙動不審の悦子に、公次は「きみは仲がこじれた山根を殺して、逃げてきたのだろう」と断じるのだが…。(「影の訪問者」)
全篇を会話だけで構築した異色ミステリー六篇を収録。

ここに収められた短編はいずれも登場人物の会話だけで成り立っており、いわゆる「地の文」は1行もない。

もともと笹沢作品には長編でも「2人の会話が延々続くシーン」というのがよく出てくるので、他の人が書くよりは自然な感じがするものの、完全に会話だけで話を成立させるにはかなりの技巧が必要だと思う。

最後の「皮肉紳士」のような、登場人物が安楽椅子探偵的に推理を行うような話は難度が比較的低そうだが、他の話はそうではない。序盤で若干セリフが説明的になるのはしかたがないとして、どれもよくできていた。タイトル通り適度にどんでん返しが入っている。マイベストは「父子の対話」。