米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

女囮捜査官(3) 聴覚(山田正紀)

毎回工夫を凝らしてくれるこのシリーズ。しばらく経つと次の巻を読みたくなってくる。

女囮捜査官の北見志穂は、凶暴な殺人犯を射殺したことで追いつめられ、軽度の神経症に陥っていた。直後、誘拐事件が発生し、犯人は志穂を名指しで身代金の運搬役を命じた。犯人は誰? 双子の妹? 精神を極限まで蝕まれた志穂は、いないはずの双子の妹のことが頭から離れない。<世界最小の密室>の謎―驚天動地の本格推理シリーズ第三弾!

誘拐事件と「多重人格」の謎が組み合わせられていて、どちらも極めて巧妙に仕組まれている。北見志穂はこれまでよりずっと翻弄されるし、味方も少ない。この状況で奸計をめぐらす犯人と戦わなければならない。この追い詰められ方はスリル満点だった。

真相が明らかになるくだりは圧巻。ラストのシーン、志穂は「吹っ切った」ということなのだろうか。

前作で「お約束」になったと思った「捜査会議で刑事全員のためらいがちな期待の視線を浴びておとり捜査を決意する北見志穂」のシーンは出てこなかった。そんな悠長な展開ではない。緊迫した、かつ深いところに入り込んだ作品になっているのである。