全脳自由帳

より考えるために書く

スコッチ・ゲーム(西澤保彦)

スコッチ・ゲーム (角川文庫)

スコッチ・ゲーム (角川文庫)

タック&タカチシリーズ第5作。タカチの生い立ちや過去が明らかになる。

通称タックこと匠千暁、ボアン先輩こと辺見祐輔、タカチこと高瀬千帆、ウサコこと羽迫由起子、ご存じキャンパス四人組。彼らが安槻大学に入学する二年前の出来事。郷里の高校卒業を控えたタカチが寮に帰るとルームメイトが殺されていた。容疑者は奇妙なアリバイを主張する。犯行時刻に不審な人物とすれ違った。ウイスキイの瓶を携え、強烈にアルコールの匂いを放っていた。つけていくと、河原でウイスキイの中身を捨て、川の水ですすいでから空き瓶を捨て去った、と…。タックたちは二年前の事件の謎を解き、犯人を指名するため、タカチの郷里へと飛んだ。長編本格推理。

麦酒の家の冒険」「仔羊たちの聖夜」の安楽椅子探偵度とあまりの後味の悪さにちょっと辟易していたのだが、この作品はおもしろかった。

やはり話に動きがあった方が迫力がある。各種伏線も周到に張られていて、終盤のタックの推理(いくら名探偵とはいってもちょっと千里眼すぎるが)にうまく結びついている。初めてタカチの内面に本格的にメスが入れられており、それを通じた作者の人間考察(加害者・被害者考と言うべきか)は興味深い。

それにしても、この作品の「後味」が悪くなかったということは、結局私は「よい人」と「悪い人」がある程度はっきり分けられている話が好きなのかなと考えてしまう。そう認めるのは気が進まないが。

ともかく、低調な感想のままシリーズを読み進めることにならなくてよかった。次は本丸(?)の「依存」である。