全脳自由帳

より考えるために書く

宿命(東野圭吾)

宿命 (講談社文庫)

宿命 (講談社文庫)

1990年の作品。

高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。

「幼なじみの二人が宿命の対決」というのとはちょっと意味合いが違う気がするが、結末は全く予想できなかったし、強烈だった。何もかもが「終章」で明らかになる。「宿命」という言葉がこの作品で持つ意味も。

解説(この文庫版の解説はかなりネタバレなので、先に読まない方がよい)にも書かれているが、東野作品の主軸が本格推理小説からそうでないミステリー小説へ移っていく変局点にあった作品なのではないかと思う。殺人の真相よりもそれ以外の謎の方がずっと大きな意味を持っているのである。

医学がからんでくるところは後のいくつかの作品と共通している。読み終わってから「この後どうなるのだろう? どうやっていくのだろう?」と考えさせるという点では「秘密」と似ている。いずれにしても東野ファン必読の1冊。