全脳自由帳

より考えるために書く

人間動物園(連城三紀彦)

人間動物園 (双葉文庫)

人間動物園 (双葉文庫)

2002年に「白光」に続いて出された作品。

記録的な大雪にあらゆる都市機能が麻痺するなか、汚職疑惑の渦中にある大物政治家の孫娘が誘拐された。被害者宅の至る所に仕掛けられた盗聴器に、一歩も身動きのとれない警察。追いつめられていく母親。そして前日から流される動物たちの血…。二転、三転の誘拐劇の果てにあるものとは!? 連城マジック炸烈の驚愕ミステリー。「このミステリーがすごい!」2003年版・第7位。

細かくて的確な人物描写に、いつもながらの意外な真相。誘拐ものなのに身代金の受け渡しがそれほど重要な場面にはならず、他のところに焦点が当たっているのはユニーク。

「二転、三転」の二転目ぐらいまでの切れ味は鋭かったのだが、最後の結論にあたるところが犯人の単なる自己満足としか思えないのが残念だった。

動物をいろいろ登場させ、人間を動物の一種として描写するのは、私が動物が苦手なことを差し引いてもあまり成功しているとは思えない。白い雪に包まれた街の描き方などには独特の味があってよかったが。

全然関係ないが、「人間動物園」を英語にするとhuman zoo。「自切俳人とヒューマン・ズー」を思い出すのは私だけだろうか。「自切俳人のゴールデン・アルバム」、また聴きたいな。