全脳自由帳

より考えるために書く

東京下町殺人暮色(宮部みゆき)

東京下町殺人暮色 (光文社文庫)

東京下町殺人暮色 (光文社文庫)

魔術はささやく」がよかったので、宮部みゆきの作品をもっと読んでみようと思った。しかしたくさんある中のどのへんから攻めていいのかよくわからない。とりあえず、初期の作品でなおかつページ数の少ないこれからいってみることにした。

13歳の八木沢順が、刑事である父の道雄と生活を始めたのは、ウォーターフロントとして注目を集めている、隅田川と荒川にはさまれた東京の下町だった。そのころ町内では、“ある家で人殺しがあった”という噂で持ち切りだった。はたして荒川でバラバラ死体の一部が発見されて…。現代社会の奇怪な深淵をさわやかな筆致で抉る、宮部作品の傑作、ついに文庫化!

これでやっと3冊目だが、いつも文章と構成がしっかりしていると感じさせられる。この作品に関しては「さわやかな筆致」というのが当たっている。バラバラ殺人という猟奇的な事件を扱いながら暗くならない。少年の冒険譚としても読めるし、社会派ミステリーとしての側面もある。思わぬ「探偵役」が出てくるところもよし。

残りページ数がかなり少なくなってもほとんど手がかりがつかめない。真相についても全く想像がつかない。どうなるのだろうと思ったら、急展開で思わぬ収束へ。よく練られた作品である。毎作こうやって「うまい!」とうなることができるのなら、他の作品も読んでみなければ。で、次はどれにしようか...。