全脳自由帳

より考えるために書く

十字屋敷のピエロ(東野圭吾)

十字屋敷のピエロ (講談社文庫)

十字屋敷のピエロ (講談社文庫)

「気鋭の乱歩賞作家」だった東野圭吾が1989年に出した作品。

ぼくはピエロの人形だ。人形だから動けない。しゃべることもできない。殺人者は安心してぼくの前で凶行を繰り返す。もし、そのぼくが読者のあなたにだけ、目撃したことを語れるならば…しかもドンデン返しがあって真犯人がいる。前代未聞の仕掛けで推理読者に挑戦する気鋭の乱歩賞作家の新感覚ミステリー。

島田荘司を思わせるような特殊な構造の屋敷の見取り図。これは何かあるぞと予感させる。物語の大半はこの屋敷に来た竹宮水穂の視点で描かれるが、時おり入る、屋敷に置かれたピエロ人形の視点からの描写がそれを補完し、かつ緊張感を増す役割を果たす。人形師の悟浄もいい味を出している。

複雑かつ巧妙に構築されたストーリーに大仕掛けなトリック。最後に真相がわかった時には背筋がゾクッとした。

これまでに読んだ東野作品のうち、私が本格推理ものだと思っているもの(「秘密」「白夜行」は入らず、「容疑者Xの献身」は入る)の中で一番よかったかも。オススメである。