米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

殺しの双曲線(西村京太郎)

殺しの双曲線 (講談社文庫)

殺しの双曲線 (講談社文庫)

西村京太郎といえばとにかく多作な人というイメージ。そして「特急○○殺人事件」というようなトラベルミステリーの印象が強い。これはそちらに移行する前、1971年の作品。

差出人不明で、東北の山荘への招待状が6名の男女に届けられた。彼らは半信半疑で出かけて行く。雪に埋もれ、幸福感に酔っていた彼らはやがて恐怖のどん底に突き落とされた。殺人が発生したのだ。しかも順々に……。クリスティ女史の名作「そして誰もいなくなった」に、異色の様式で挑戦する本格推理長篇。

「吹雪の山荘」もの。最初に「この推理小説のメイントリックは、双生児であることを利用したものです」と宣言している。つまり双子のトリックを使っていることをあらかじめ明らかにしているのである。そう書くからには一筋縄ではいかないだろうなと思っていると、確かに複雑なトリックだった。最後に明らかになる動機も意外。かなりオススメである。

メモとして書いておくと、一卵性双生児は遺伝情報が同じなのでDNA鑑定では区別がつかない。しかし指紋は遺伝情報だけで作られるわけではないので異なる(よく似た形状にはなるらしいが)。そのことがこの作品でも少し使われている。ちなみに二卵性双生児の場合は普通の兄弟と同じで、DNA鑑定でも指紋でも区別できるし、性別や血液型も異なることがある。