全脳自由帳

より考えるために書く

フランス白粉の秘密(エラリー・クイーン)

フランス白粉の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-34)

フランス白粉の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-34)

国名シリーズ第2作、1930年。

ニューヨーク五番街の一角を占めるフレンチ百貨店では、新型家具の展示が行われていた。係が壁収納式ベッドのボタンを押すと、飛び出したのは、なんと社長夫人の射殺死体だった。しかも、所持品には彼女のものでない麻薬入りの口紅が含まれ、その口紅の持主と判明した被害者の娘は失踪していた。百貨店を危機に陥れた事件の謎をエラリイは明晰な頭脳でどう切り崩すのか? 巨匠の名を不朽のものとした国名シリーズ第二作

例によって、「読者への挑戦」が提示されても犯人が誰なのか全くさっぱりわからなかった。解決編でエラリイが披露する水も漏らさぬロジックにただただ感心(父親のクイーン警視はあまり活躍しなかった印象)。犯人をはじめとする登場人物の行動にも大げさなところがなくてよい。

ドラマ性はともかく、純粋にロジックを楽しむには格好の作品だと思う。ただし同じ説明がエラリイによって何度も行われるのはちょっと冗長。それと、「スカーフの謎」の説明が最後までなかったのは不満。

ところで、タイトルになっている「フランス白粉(おしろい)」が話の中に全く登場しないのはなぜだろう。「白粉」が(比喩的に)ヘロインを指すのはわかったが、どうしてフランスなのかがわからない。それがこの作品に残ったもう1つの謎である。

原題は「The French Powder Mystery」で、舞台となる百貨店(および社長)の名前が「フレンチ」なので、もしかしたら「フレンチ百貨店での(or フレンチ家にまつわる)粉に関するミステリー」というだけで、別に「フランス白粉」ではないんじゃないのか?