全脳自由帳

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ローマ帽子の秘密(エラリー・クイーン)

ローマ帽子の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-33)

ローマ帽子の秘密 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-33)

国名シリーズ第1作。クイーンは「Xの悲劇」〜「ドルリイ・レーン最後の事件」の4作を読んだらやめにしておこうかと思っていたのだが(そっちもまだ2作しか読んでいない)、友人から「国名シリーズの方がおもしろい」と薦められたので、これを読んでみることに。

海外ミステリーや海外SFでは、同じ作品がハヤカワ文庫と創元推理文庫の両方から出ていることがよくある。そういう場合は私はハヤカワの方で読むようにしている。好みによるのかもしれないが、ハヤカワの方が私には訳文が自然で読みやすいことが多いからである。

この作品は古本屋で創元推理文庫版(「ローマ帽子の謎」)を見つけて買ってしまったのだが、読み始めてみるとあまりにも文章が不自然なので、ハヤカワ文庫版(絶版なので古本)で買い直したのだった。こちらは比較的読みやすい。

ブロードウェイにあるローマ劇場は観客でごったがえしていたが、劇の進行中、客席後方で異常な事態が持ち上がった。ニューヨークきっての悪徳弁護士が毒殺されていたのだ。現場から明らかとなったのは、死者がかぶっていたはずの帽子が消えていたことだった。弁護士に恨みを抱く小悪党、社交界の花形、劇の俳優たち……帽子は誰の手によって、なぜ消えたのか? 本格謎解きの妙味を見せるクイーンの処女長編。新訳決定版

ほとんど帽子だけの手がかりから鮮やかに犯人が推理されるのは見事。ロジックで迫るクイーンの技を堪能させてもらった。途中で「読者への挑戦状」に相当するものが挿入されるが、私には犯人の見当が皆目つかなかった。

帽子については、当時(1929年)のアメリカ紳士の服装についての知識がこちらに乏しいせいで実感に欠けるのがちょっと残念。このへんが海外ミステリーを我々日本人が読むときの宿命ではある。あと、そういえば有鉛ガソリンというのがあったなと思い出した。これが毒殺に関係するのである。