全脳自由帳

より考えるために書く

夏のレプリカ(森博嗣)

夏のレプリカ (講談社文庫)

夏のレプリカ (講談社文庫)

S&Mシリーズ第7作。前作「幻惑の死と使途」が奇数章だけから成るのに対し、この作品には偶数章(第2,4,6,...章)しかない。これら2作が同時進行する2つの殺人事件をそれぞれ描いている。「夏のレプリカ」では西之園萌絵は親友の巻き込まれた事件に首を突っ込む形で、犀川創平は相変わらず興味を示さないながらも、真相究明に参加することになる。

華やかな「幻惑の...」に比べてかなり地味な事件を扱っているのはわざとだと思う。おまけに中盤は事件としての進展があまりなく、半分「普通の小説」になる感じ。私は割と楽しかったが、森流の小説展開が合わない人にはこの中盤が退屈かも。

終盤はあざやかに謎が解き明かされる。真相(というかトリック)はかなり意外だった(どう意外だったかは秘す)。真相が明らかになるシーンはgood。気に入った。最後の最後は賛否両論だと思うが、私はこうしなくてもよかったような気がする。「そして二人だけになった」で感じたのと同種のひっかかりを少し感じた。

読んだあとでWebのネタバレ書評をのぞいて知ったのだが、「幻惑の...」との両方を読んで初めて意味のわかる部分もあるようだ。よく考えられているものである。次に読む時は、2冊を交互に1章から順に読んでいくとおもしろいかもしれない。しないと思うけど。