米中毒別館

思いついたことをこまごまと。本の感想なども。

マジックミラー(有栖川有栖)

新装版 マジックミラー (講談社文庫)

新装版 マジックミラー (講談社文庫)

学生アリスでも作家アリスでもないノン・シリーズの一作。時刻表がらみのアリバイトリックをはじめとして、いくつかのトリックが登場する。そのいずれにも「双子」がからんでいるという趣向。

おもしろい作品だった。「双頭の悪魔」とともに有栖川有栖の代表作に挙げる人が多いというのもうなずける。時刻表を使ったトリックはあまり好きではない(時刻表をたどって理解するのが面倒だから)のだが、時刻表の問題だけではない味つけがあったし、他のトリックにもうならされた。

途中、作家・空知雅也の「アリバイ講義」があり、推理小説で使われるアリバイトリックの分類が試みられている。ジョン・ディクスン・カーの「三つの棺」での「密室講義」にならったものらしい。この講義は興味深い。その中で「アリバイミステリの巨匠」として語られている鮎川哲也がこの作品の解説を書いている。

「アリバイ講義」では、各分類の作例をタイトルを言わずに挙げているのだが、「文庫版のためのあとがき」の中でタイトルを紹介してくれている。それらの作品も読んでみたくなる。

私が読んだのは文庫の新装版。「新装版のためのあとがき」では以下のくだりが印象的だった。新装版向けの手直しのために作者が読み返した時のこと。

中盤、はらはらして心臓が縮んだ。物語がスリリングだったからではなく、書いた当人がトリックの一部を忘れていたためだ。「おかしい。××の××について説明がつかん!」と頭を抱えたのだが、最後まで読むと納得した。はぁ。齢をとるとは、こういうことか。

作者本人でもこんなことがあるんですな。